ポケモンと広島

 「ポケモンGO」が現れては困る、迷惑だと削除要請が相次いでいるそうです。あす8月6日、被爆71年の原爆忌を迎える広島市の平和記念公園、原爆ドーム、原爆の子の像についても、広島市が「慰霊、鎮魂のための聖域の静けさや雰囲気を失わせる」と、入手場所からの削除を要請しました。

 平和記念公園一帯は、原爆投下によって焦土となるまで、商店や映画館、劇場が立ち並ぶ広島一の繁華街として知られていた場所です。川を渡れば、広島県の産業奨励館が、中央に丸屋根を置き、羽根を広げたような壮麗さを見せていました。

 たった一発の爆弾、一瞬の閃光がそうした街並みを消し去り、産業奨励館は原爆ドームと呼ばれる無残な姿と化しました。その年の年末までに14万人ものかけがえない命を奪ったのです。

 市民にとっての憩いの場は廃墟となりました。戦後、復興の象徴として、斬新なデザインの平和記念資料館や美しい公園が建設されましたが、核兵器の悲惨を訴え続ける原爆ドームや数多の慰霊碑がある平和公園は、被爆死者の墓標であると言ってもいいでしょう。

 広島で勤務したころ、家族を連れて何度か平和記念公園を歩きました。記念館も訪れました。「観光」なので、当然、記念写真も撮ります。でも、娘や息子には「Vサインはしないで」と言い聞かせました。原爆ドームからは少し離れたところでカメラを構えました。「ここはね、たくさんの人が亡くなった場所なんだよ」と。

 「ポケモンGO」をめぐる大騒ぎは、広島だけにとどまらないようです。ただ、規制、規制ばかりでは息苦しくなります。広島の場合、入手場所の削除要請は6日午前の平和記念式典が終わるまでの対応だそうです。慰霊、静けさは必要ですが、娯楽の場だった頃のさんざめきに思いをはせることも、平和の大切さを確かめることになるのではないでしょうか。