2016ノーベルウィーク

ノーベル賞週間です。広報室としては、自然科学系の3賞が終わって、ほっと一息ついているところです。福井大学から受賞者が出れば、素晴らしいことなのですが、そうではないのに、なぜなのか。地元の新聞社から、受賞理由となった研究成果について解説してくれる先生を紹介してほしいと、要望が寄せられるからなのです。

今年も日本人の受賞者が出ました。オートファジーの研究によって、東京工業大の大隅良典さんが生理学・医学賞に選ばれました。免疫系研究の受賞を想定して医学部担当の広報室員が事前にコメンテーターをお願いしていた先生から、たどってたどって、オートファジーに詳しい先生を探し出し、取材に応えました。結果、地元2紙に大きく報道されました。こうした「見せ方」でも、福井大学の存在感をアピールできます。

翌日の物理学賞は、超伝導や超流動といった低温物理の現象を、数学のトポロジーを使って解明したという、なんとも難しい研究です。さらに、化学賞はナノスケールの分子機械だそうで。これについても、工学部担当の広報室スタッフが、専門領域の近い工学部の先生を検討しました。

一昨年、名古屋大学の天野浩さんが物理学賞を受賞した際、窒化物半導体の共同研究をしている工学部の葛原正明先生に取材対応をお願いしました。地元紙に掲載されたツーショットの写真が、福井県庁の担当者の目にとまり、高校生対象の講座に天野さんを招くため葛原先生に紹介してほしいと要請があったそうです。せっかく、福井県にノーベル賞受賞者を呼ぶのなら、福井大学でも講演していただこうというわけで、今年2月の講演会が実現しました。そんな副次的な成果もあるのです。

というわけで、広報室では毎年、ノーベル財団のホームページを見ながら、コメンテーター探しを続けているのです。“柳の下のドジョウ”を狙っているといわれれば、そうなのですが・・・。

さて、本日7日は平和賞の発表です。まったく予想はつきませんが、現職のアメリカ大統領が、自国の落とした原子爆弾の被爆地をついに訪れた5月の出来事は歴史的なインパクトを世界中にもたらしました。とすれば、もう何年も前から候補に擬せられている広島、長崎の被爆者たちが栄誉を受けることになるのでしょうか??

オバマ大統領の広島訪問の意義は多く語られていますが、もっとも注目すべきことは、広島が彼を「歓迎した」ことではないかと思うのです。恨み、報復の意志が被爆直後に全くなかったわけではないと思いますが、70年以上の時を経て、慰霊碑の前で被爆者団体の代表は大統領と固く握手し、被爆した米兵捕虜の調査を続けている方は抱擁を交わしました。何という「寛容の精神」でしょう!! いま、世界中が不寛容に覆われ、不機嫌な空気に満たされていると言われています。広島と長崎合わせて1945年末までに20万人以上が亡くなったにもかかわらず、広島は残虐な兵器で肉親や生活を奪った敵国のリーダーを握手と抱擁で迎えたのです。

この寛容さこそが、自身の体と言葉でもって原爆被害の悲惨さを訴え続けた被爆者の姿こそが、3番目となる核兵器の実戦使用を保有国に思いとどまらせている原動力として働いていると確信します。核兵器の廃絶と恒久平和を希求する広島・長崎のこころは、核実験と運搬手段の開発を止めない隣国の危うさを目の当たりにすればするほど、輝きを増すのではないでしょうか。

その頂きに、最高の栄誉があっても何ら不思議ではありません。核兵器がなくなってからでは、おそらく被爆した方々は1人もいなくなっているでしょう。ノーベル賞は、受賞者が存命であることが条件なのです。さて、コメンテーターはいるでしょうか。

※いましがた(午後6時)発表があり、内戦が終結したコロンビアの和平実現に尽力した大統領が選ばれました。外れました。残るは、10日の経済学賞と13日の文学賞です。